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熊谷真実さんに開演直前インタビュー

楽屋訪問79

  CATプロデュース公演「さくら色 オカンの嫁入り」鳴門例会(2017年1月26日)で“陽子[オカン]”役をされる熊谷真実さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
まず作品についてお伺いします。最後は悲しい結末で終わるのですが、癌が見つかって、それも末期の状態で。
熊谷真実(敬称略 以下熊谷と略) 熊谷真実
そうですね。この作品は「もしかしたら」という期待を持たせる終わり方かもしれませんね。ストーリーをご存知なくて観劇される方がとても多くて、すごく感動したとおっしゃってくださいます。最後は癌ということは分かっているんだけど、もしかして(助かるんじゃないか)という終わり方をしています。
鳴門
この作品について、どういうふうに観て欲しいですか?
熊谷
どういうふうに観て欲しいとかは全然考えてなくて、例えば別団体の交流会では、実際に引きこもりのお嬢さんをお持ちのお母さんがいらっしゃって、「自分の余命が分かってから、彼女のことを考えた時に涙が止まらなかった」の言葉が心に響きました。他にも自分でも手術したことのある方とか、みんな自分に引き付けて観て下さったのがとてもうれしくて…。この芝居の中の台詞に「人はいろいろ、誰でも何かしらあるけどなあ」とあるように、皆さん何も無いなんてないわけで、そういう部分で、それぞれが観て下さったらありがたいなあと思います。
鳴門
舞台はいろいろご苦労があったと思いますが、お話しして頂けますか。
熊谷
私にとっては今回再演なんですけど、初演のような気持ちでやらせて頂いています。というのは初演でやった時見えなかったこと、分からなかったことが、昔みかんで字を書いて、あぶったら字がでてきたみたいな、ああいう感じでじわーと何か感じるものが見つかって、今回はじわーと感じたことを大切にしてお芝居をさせて頂いています。
男の人に頼りたいという女性の気持ち、女としての想いと母という想いのはざまで揺れている陽子さんっていう人をちゃんと演じてあげられたらなあと思います。
鳴門
初演はいつでしたか?
熊谷
2年前です。2年たつと、それこそいろいろなことがあるんで、台本の読み方もやっぱり変わってきたりします。その部分がストレートにお客様に伝わるといいなあと思います。
鳴門
どういう話か分からないまま観ますが、熊谷さんが今いろいろ言われたことで、ちょっとショックを受けているんですけど(笑)。舞台では明るいお母さん役ですけど、ご本人と比べてどうでしょう、同じような感じなんですか。
熊谷
初演の時はすごく自分に近く感じて、なんというか本当に自分じゃないかと思うぐらいでした。
実はそれが間違いだったなあと思ったところがありました。その間違いの部分が今度ちゃんと表わせたらいいなあと思います。
鳴門
そこはどの部分でしょうか?
熊谷
全体的ですね。「陽子の適役は私しかいない!」みたいに、初演の時は思っていたんですが、いやいやところがどっこい、彼女にはとうてい太刀打ち出来ないなあと思って。その部分が今回悩んだ部分であって、私と陽子さんは別人なんだと思うところから、しっかり演じられたらいいと思いました。観ている方には、熊谷真実さんはきっとこんな人なんだと思って観て下さって一向にかまわないですけど、私の中では自分が思っているより陽子さんっていう人は、もっと深いのではと感じています。
鳴門
一つの舞台を作り上げるのにあたって、楽しかったこと、他のキャストの皆さんと仲良くやれたこと等ありましたか?
熊谷
皆本当に仲が良くて、家族みたいで。おじいちゃん、おばあちゃんがいて、娘がいて、婿がいて…子供みたいで、今回の座組の構成が本当に良くって。 舞台終わったら必ず皆で温泉行ったり。
鳴門
俳優になったキッカケは何だったんですか。
熊谷
そうですね。私は子供の頃からとても本が大好きで、本の中の主人公になって、物語を読むのが大好きだったんですね。小学校6年生で演劇部に入っていました。幼稚園の頃から演技することが大好きでした。キッカケといったら、幼稚園の時に「月の沙漠」を踊った時に、衣裳つけてお化粧してもらった時、自分が別人になるような感じで、何か魔法の杖でも振ってもらったみたいな気分になったこと、それが出発点じゃないかなあと思うんです。自然に女優を志したんじゃないかなあと思っています。
鳴門
生まれつきのものですね。
熊谷
生まれつきというよりも、物心ついた時から好きだったんですね。わあーと、こんな風に変われるんだって、その時の快感というか、幼稚園の時の気持ちのまんまですね、今でも(笑)。
鳴門
テレビ、舞台と活躍されていますが、一番重きを置いているお仕事は何ですか?
熊谷
舞台は好きですね。勿論テレビもバラエティー番組も何でも好きなんですけれど、やっぱり舞台は皆で作り上げていくものだし、時間をかけて創っていって、何回やっても味が出てくるっていうか同じものは2度とない、というところに魅力を感じています。去年は映画も一本出させてもらってそれはそれで面白いんですが、映画は最終的にはやっぱり監督さんのものなんですよね。舞台は最後は役者が作って育てていくものだと思う。とても舞台に魅力を感じます。
鳴門
客席の空気感でも、お芝居によってかなり違いますよね。
熊谷
全然違いますね。こうやって演劇鑑賞会で廻っていても、ご覧いただく方が毎回違うし、まず劇場が広くなったり小さくなったりすると、自分が舞台で作ってきたものが拡散してしまうんじゃないかと不安になる時もあります。でもその時にも地に足をつけて、しっかり芝居をするということを心掛けています。
鳴門
ここは広いんですよ(笑)。
熊谷
でも結構そういうとこ多いので。その中でどうやって拡散せずに、みなさんにぎゅーと観てもらえるかということを気にしますね。
鳴門
なるべく真ん中に詰めるようにしますけど、1600名も入るホールでは、後ろの方はガラガラですね。
熊谷
うしろの方がお好きな方もいますしね。広いと皆さんいろんな席でてんでバラバラに観られるでしょうし。そういう中で、いつもご覧いただく方に愛されますように、皆様に届きますようにと、ちょっと心でお願いして(笑)。
鳴門
一か所で長い期間公演されるのも大変だと思いますが、地方を回りながら公演するのも違った意味で大変なんじゃないかなあ。出発前に冷蔵庫の中を整理しながらとか聞いていますが。
熊谷
そうなんです。今はこんな大きいミキサーを持ってきているんですよ。荷物が重いんでスタッフさんたちには迷惑をかけているんですけど (笑)。毎日野菜スムージーをせっせせっせと作っています。
鳴門
配られるんですか。
熊谷
はい。自分の健康管理だけじゃなくて皆さんの健康管理もしている。余計なお節介かもしれないのですが、皆のおかんになって(笑)。重たい荷物を運んで頂いている分だけ、皆さんにスムージー作ってあげる。自分はそれですごく体調がいいし元気なので、これだけはと思って。
鳴門
食べるものはどうですか。
熊谷
野菜がおいしくて、しかも安くて。東京だったら人数分、十何人分つくったらちょっとパンクしちゃうんですけど。こっちだったら全然大丈夫ですよ。
鳴門
野菜本当においしいんですか。
熊谷
はい。今日は高知の朝市で、花江さんが野菜を買ってきてくださって。
鳴門
今回はお遍路さんを廻られていらっしゃいますね。
熊谷
そうなんですよ。花江師匠はもう3度廻られているんですよ。八十八か所のお寺、私も行ってみたいと言ったら、花江師匠は「何回でも行きたくなるねん」とおっしゃって、今回は私がお接待して頂いて、師匠のお供で、もう今日で4か所廻りました。今朝8時に起きて1時間だけで二か所廻って…。徳島は札所が多いと聞いたんで、どれくらい廻れるのかなあと思っています。
鳴門
地図を用意してきました。
熊谷
あらあ、そうなんだ。ありがとうございます。
鳴門
熊谷さんの名前がついた熊谷寺というのがあります。私も行ったことがないのですが、時間等がついた案内書を持ってきているので、良かったら見て下さい。
熊谷
後で見させて頂きます。ありがとうございます。これをご縁にしたいですね。実は私は阿波踊りをやっていて、徳島の天水連という連の連員なんです。
鳴門
ええー。
熊谷
去年は舞台があって出られなかったんですけど、多分今年は出られるんじゃないかと思います。でも天水連の法被を着て普通に踊るので、芸能人チームじゃなくて (笑)。
阿波踊りは小学校の頃からずっとやっています。
鳴門
どこでですか。
熊谷
高円寺です。元々は高円寺に住んでいて、それで一昨々年やっと徳島デビューさせて頂きました。
鳴門
すごいなあ。
熊谷
そうそう鳴門には大塚美術館もあって観にいったこともあります。
鳴門
私、大塚美術館に勤めております。
熊谷
そうなんですか。こちらの鳴門の美術館の方とも少し親しくさせて頂いていますよ。
今年は鳴門でも踊れたらなあと思っています。その時は是非応援して下さい。
鳴門
私、大塚美術館の近くのモアナコーストというところのホテルでフロントをやっていますので宜しくお願いします。
熊谷
えっ、私行ったことがあるんですよ。
鳴門
何年前ですか?
熊谷
3年前かなあ。
鳴門
そうなんですねえ。
熊谷
あそこなかなか予約がとれないんですよね。ホテルも含めて。
鳴門
とります(笑)。
熊谷
やったあ。ごはんもおいしいですしね。
鳴門
そうなんです。ありがとうございます。
鳴門
私たちは幼稚園からの幼馴染で、幼稚園時代に「狼と7匹の子ヤギ」に一緒に出ていた中で(笑)、その時は女優に目覚めることもなく、お話を聞いていてうらやましかったです。
私たちも市民劇場で年に6本演劇をさせて頂いているんですが、すごく魅力的な芝居ばかりで入って良かったと思っています。
熊谷
演劇人口が減ってきつつあるのは寂しいなあと思いますが、それをなんとか皆さんの力で盛り返して欲しい。そして良い芝居をすれば、お客様が来てくれると信じているので、こうやって皆さんが手弁当でなさっているのには頭が下がる思いです。そのためにも一生懸命お芝居をしなきゃなあと思っています。本当にありがたいなあと思っています。
鳴門
今例会もクリアしました。41名退会で43名入会です。
熊谷
よかったあ。でも、そんなに退会なさる方が多いんだ。
鳴門
年末は多いんですよ。普通は20名から25名ぐらいです。これで24例会連続クリアです。
熊谷
すごいですね。
鳴門
ありがとうございます。
熊谷
差し入れもありがとうございます。何かおいしそうな差し入れ、後で頂きます(笑)。
鳴門
クリアに関しては毎回プレッシャーが掛かるんです(笑)。
熊谷
そうでしょう、ねえ。
鳴門
私たちは、事務局長はじめ、お世話してくれる人たちが好きで、市民劇場を辞めるつもりはないし、年はいっているが、いけるだけは行こうと思っています。
熊谷
やっぱり、お芝居もそうですがチームワークですから。だから今日は頑張ります(笑)。ご苦労を無にしないように。
きっと今日観た方が徳島の会員の方たちに面白かったよと言って下さると思うので。やはり口コミは大事なんだなあと思います。今日も頑張ってやります。
鳴門
テレビで見ている感じと全然変わらないというか思ったままのイメージの方なんですね(笑)。
熊谷
そうですねえ(笑)。よく言われます(笑)。私たちはベースがこれで、あとは添加するのが仕事なんで、余りベースに熊谷真実を盛り沢山にしちゃうと、駄目だなあと思っています。いつもなるべくシンプルに心掛けて生活をしています。
鳴門
私たちのような演劇鑑賞会の活動について考えていることがあればお聞かせ下さい。また、鳴門市民劇場の会員に一言メッセージをお願い致します。
熊谷
先ほど言ったこととちょっと重複してしまうかもしれませんが、私たちは、こうやってお芝居が好きで観に来てくれる方がいないと、何も成り立たないお仕事をしていて、観客があるから女優でいられるんですね。こうやって観に来て下さる方をいつも集めて、会員を増やそうと努力していらっしゃる演劇鑑賞会の皆さんには本当に感謝です。それに報いるようなお芝居をしたいと思っています。こうして呼んで下さったことに本当に感謝しております。今回、これをご覧になってない方も、やっぱりそんなに良かったのなら私も入れば良かったという方が増えるように、心からお祈りしております。
鳴門
どうもありがとうございました。
熊谷真実さんとインタビューア

E-mailでのお問い合わせは     鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。