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岸並万里子さんに開演直前インタビュー

楽屋訪問72

  劇団東演公演「朗読劇 月光の夏」鳴門例会(2015年7月19日)で“吉岡公子”役ほかをされる岸並万里子さんを開演前の楽屋に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
まず作品「月光の夏」についてお伺いしたいと思います。重い内容ですが、感動を与えてくれます。この作品を敢えて朗読劇にしたのはなぜですか? 岸並万里子
岸並万里子(敬称略 以下岸並と略)
この作品は元々、原作の毛利恒之さん自らが「月光の夏〜晩歌〜」と題して戯曲化されたものです。2時間45分の大作で、徳島県でも例会で取り上げていただきましたし、全国各地や学校なども廻りました。数年が経ち、この作品をもっと世の中に伝えていくために、朗読劇にしたらお客様の想像力がもっと膨らむのではないかとお考えになり、12年前、初版を書いてくださいました。劇団としても、新たな気持ちで創りなおそうと、演出家を青年座の鈴木完一郎さんにお願いしました。そこで、大事な主役であるピアノを、音響効果ではなく生のピアノ演奏にして、それとともに朗読しようということになったのです。五人が演奏する事で初めて成立するのです。
鳴門
色々ご苦労があったと思いますが…。
岸並
初演のときから役者としてかかわってきた私は、最初に台本をいただいた時は、これは大変だなあと思いました。普通の芝居とは違うな、と。ずっとお客様と対面しながら読んでいく、つまり一瞬も気を抜けない演出のスタイルだったので、台詞は膨大ですし、なかなかついていけませんでした。
鳴門
十分伝わってきました。
岸並
その言葉は、私たちにとってとても嬉しいことです。この朗読は、いろんな役を演じながら進んでいきます。客観的な説明役になったり、次の瞬間には個人の役を演じたり、言葉だけでその人物の人生、実生活を感じさせていかなければならない。どんな工夫を?という質問に答えるとしたら、余計な色付けを抑えて、事実をそのまま伝えることを大事にしています。
鳴門
勉強して役に臨むのですか?
岸並
この舞台に限らず、と言ってもいいかもしれませんが(笑)。初演のときは、戦争のことを親から少しは聞いていましたが、今に比べれば大変勉強不足でした。自分がどう演じていったらいいのか悩み、落ち込みながら稽古をしていました。その度に、演出家の檄が飛んでくる有様でした。この作品をやるからには、背景をしっかり考えなくてはいけないと思いました。背景を押さえることで、作品の裏にあるメッセージが見えてくるのです。だから勉強が足りないと、芝居は薄っぺらなものになると思います。
鳴門
話は変わりますが、岸並さんが俳優になるきっかけは何だったんですか?
岸並
同期の仲間たちは、中学や高校の演劇部にいた人が多かったのですが、私は全く経験がありませんでした。短大のクラブ活動でちょっと芝居をかじって、舞台をやりたい気持ちはあったんですが、卒業後は銀行員でした(笑)。とりあえず働いて自立しなきゃと思っていました。物足りなさを感じていた私は、働きながら通えるところを捜し、東京の舞台芸術学院という学校に通い始めました。そこの先生から劇団東演付属養成所を紹介されて、横川さんに出会ったわけです。入団試験に受かった時は驚きましたが、一晩で銀行員から方向転換してしまいました。もう25歳になっていたんですけどね・・・・(笑い)。
鳴門
最初のきっかけ通り、やっぱり舞台が多いですか。
岸並
私は、映画を観るのがとても好きなんです。でも憧れたのは映画女優ではなく、字幕を作るとか、製作会社とか、裏方のほうに興味を持っていました。演じる方にも勿論興味はありましたが、自分がやるとしたら、映像より舞台が楽しいと思っていました。
鳴門
趣味はありますか?
岸並
どちらかと言うとインドア派なので、休みの日はDVDをよく観ています。小さいころから両親が映画館に連れて行ってくれたので、映画館にも出かけます。
鳴門
座右の銘とかありますか?
岸並
これが一番困った質問ですね(笑)。座右の銘という立派な言葉は特にないんです。私はとても不器用だと思っています。駄洒落なんですけど、座右の銘とは言いがたいですが、「不器用を武器に」と言っておきます。芝居なんてこんな地道な作業、不器用な人間にしかできないような気がします。でもそれが自分だし、不器用は欠点ではない、最近少しそう思えるようになってきました。
鳴門
最後に演劇鑑賞会について考えておられることがあれば、また鳴門市民劇場の会員に一言メッセージがあればお願いします。
岸並
若い頃は、演劇鑑賞会というものを漠然としか理解していませんでした。演劇は文化活動に貢献している一人ひとりの力で支えられています。皆さんの頭の中は、とにかく会員さんを増やすことでしょうし、私たちが東京公演でチケットを一枚一枚売る苦労と同じ、いえそれ以上のご苦労があると思います。運営サークル担当の方々は、日常生活をされながら、2ヶ月ずっと活動をされています。すごく大変なことだと思います。感謝の気持ちで一杯です。がんばって下さい、そして一緒にがんばりましょう。普段は離れているけど、私たち演技者も皆さんも、大事なメッセージを伝える担い手として、同じことを考えて生きています。市民劇場に、心からのエールを送ります。
鳴門
どうも有難うございました。
岸並万里子さんとインタビューア

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nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
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