「わたし達の毎日からは一度も八月九日が消えたことがなかとよ」
その坂道は樫の木坂と呼ぶ。長崎港を望む坂の中腹に樹齢数百年を超える樫の老木があるからだ。人々はその威風をたたえ、神木として保存してきた。だがその老木も1945年8月9日の原爆投下で息絶えてしまったと思われたが、翌年の春、一枚の葉を芽吹かせた。今では道端からこの物語の舞台になる草葉家の庭先までみごとな葉群を広げていた。
2000年、長崎は夏を迎えようとしていた。被爆者である三姉妹の生活を撮り続けてきたカメラマンの洲崎はその日、部屋のピアノについて尋ねる。
それは四女が双子の姉三女の供養のために購入したものだった。あれから55年、ピアノの調べは若かりし四姉妹が暮らしていた頃へ誘っていく。
新劇を代表する大塚道子、岩崎加根子、川口敦子が競演する堀江安夫渾身の書き下ろしを、長崎に魅かれ続けてきた袋正が演出する。河原崎次郎、武正忠明等が加わり豪華な出演者が織り成す俳優座ならではのアンサンブルにご期待ください。
死者が現在を生きる者の支えになる、ということが往々にしてある。遣り方は土地や風習で様々に違えど、どの民族もが先人の霊に敬崖な祈りの場を持っているのは、遥か昔からそのことを承知して来たからだろう。
この作品は長崎のひとつ屋根に身を寄せ合って生きる老三姉妹の物語だ。しかし敢えて「四姉妹」としたのは、原爆で命を奪われた三女が、ある時は彼女等の行動を縛ったり、またある時は励まし慰めたりと、今尚くっきりと共に生きているからに他ならない。
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| 大塚道子 | 
| 葦葉しを(長女) | 
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| 岩崎加根子 | 
| 葦葉ひかる(次女) | 
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| 川口敦子 | 
| 葦葉ゆめ(四女) | 
作:堀江安夫
演出:袋 正
鳴門市文化会館
 2012年5月23日(水) 夜6:30〜
        上演時間 約2時間40分(休憩15分を含む) 
※約250台の無料駐車場あり
あわぎんホール
 5月24日(木)
 夜6:30〜
      
 5月25日(金)
 昼1:30〜