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「父と暮らせば」ロビー交流会

2011年9月8日(木)
市民劇場会員
父と暮らせば出演者のみなさん
辻萬長さん(竹造) 栗田桃子さん(美津江)
司会
終演後お疲れの中、辻さん、栗田さんがお越し下さいました。二人芝居を終えて、まずひとことずつお願いできますか。
辻萬長さん
はい、非常に疲れておりまして…(笑)。1時間20分くらい舞台でしゃべり続けたあとなので、ちょっと口が回っていませんが(笑)。せっかくですので皆さんと交流を深めたいと思っています。どうぞなんでも質問してください。そして…。本日はどうもありがとうございました。
栗田
今日は会場が広くて、うまく伝わるか心配だったのですが、皆様がとても集中して観てくださっているのがわかりました。ありがとうございました。
司会
今回は二人芝居ということで、本当にたいへんお疲れのところを来ていただいております。
いやいや。僕ら、喜んで来ていますよ(拍手)。
会員
今日はとても感動して、涙が出そうになりました。質問は…月並みですが、辻さんへの質問で、何故押入れからユーレイが出てくる設定だったんでしょう?
押入れが好きなんです(笑)。「僕」が普通の人間じゃないことは観てる側もご存じで、作家の井上さんなりの"意外性"が出された部分ではないでしょうか。いろんな意味があるのだと思いますよ。観てくださる皆さんが「なんでだろう?」と思ってくだされば、それでいいのではないかと…。
会員
重い背景がある芝居でしたが、素晴らしかった。でも、こんな重いテーマの作品、何か役作りのところで考えたことはありますか?
栗田栗田桃子さん
あまり…考えてません。役作りを考えるというより、その役になりきりたい、と思ってやっています。そのためには「お父さん」の台詞をよくきいて、きいた上で自分の台詞を出す、それがとても難しいんですが、演出家の鵜山さんにもよくいわれることなんです。私はこの芝居の背景にある戦争を体験しているわけではありません。なので、広島の原爆資料館に行ったり、本を読んだり、映像をみたり…ということはしました。そういうものから自分の中に残るものがあって、そこから繋いでいきたいという思いはあります。井上先生の本の中にちゃんと色々なことが書かれているので、自分は自分の台詞をちゃんと伝えることと、「お父さん」の台詞をちゃんときくこと、それが、心がけていることです。
俳優という仕事は、“そうぞうする”ことです。“そうぞう”には2種類ありますけどね。いろんな役をするのに、すべて体験していなければならないってことはないから、つまり想像力が必要です。でも原作には井上さんがとてもよく書いてくれていて、娘を思う気持ちを大切に、演じています。とにかく幸せになってくれ!と思い、演じています。
自分の役の竹造は、この世にはいない人なので、愛情過多です。言葉で言うことしかできなくて、娘に触れることはできないんですから…。だから、娘を思う気持ちは過多に表現してもいいのかなあと。実際自分にも娘はいて、もちろん愛していますけど、こんなにいっぱいの言葉は言わない。でも、芝居の中で竹造は言うんですね、しつこいくらい…。それを、観てくださる人が「しつこい」とは思わず、好感を持ってくださればいいなと思います。
司会
私にも娘がおり、今日は感動して涙がまだ乾かない状態です。ずーっと心に残るような、いい作品でした。想像という言葉を出していただきましたが、私は、今回は二人芝居だったけども、お二人の背後に、原爆で亡くなった多勢の方の姿がみえる気がしました。その人たちが色々なことを「伝えてくれ」と言っているような気がしました。
会員
栗田さんにお伺いします。美津江は、自分は「生きててはいけない」「幸せになってはいけない」とずっと思っていて、でも最後にそれが変わりますね。そのきっかけはどういうものなんでしょうか。演じられていて、気持ちの変え方、変わり方はどんな風なのかおききしたいと思います。観客にはパッと変わったというのが、短い時間でも伝わりました。何か言葉があるわけでもないのに、会場がガラッと変わった。そういうのを意識されて演じられていますか?
栗田
そこまでよく観ていただいて…。全部おっしゃるとおりです(笑)。むしろ、そのように観てくださっていたならありがたいです。この台詞から(変わる)というのではないのですよね。段々…の積み重ねです。「お父さん」との関係の中で変わっていきます。
この芝居は2008年からやっているのですが、「お父さん」の台詞で「わしの孫じゃが、わしのひ孫じゃが」というのがあって、実は今年になってこの台詞がものすごく気になるようになりました。美津江は、『お父さんには「ひ孫」はみえないんだ』と思い、このままではダメと思うように、変わっていきます。
会員
そこで気持ちを変える…というのは、やっぱりすごいですね。演技力がすごいと思います。
広島弁、わかりましたか? 難しかったですか? 鳴門の人は皆さん静かですね〜。集中して観てくださるのはよくわかったんですが、井上作品なので、笑い(笑う場面)もあるわけで…。
司会
「会員が静か」というのは、よく言われるんです。
よく観てくれているというのは分かったんですよ。笑いが少なかったかな?
司会
この例会は、前例会をクリアしました! 私のサークルにも新会員さんがいて、今日は隣でボロボロと泣いて観ていて「久しぶりにいいお芝居を観ました」と言っていました。質問ばかりでなく感想も言ってください。
まあ、こうやって残ってくださっている方々は、感動したから…でしょうね(笑)。
会員
原爆をテーマにしている作品ですが、私たちは3月11日の大震災を経験したあとで…観ました。なので、"今"に向けての作品のように思えました。古い時代を描いたものですが、人が生きていく中の大切なものは、時がたっても変わらない、そういうことを、このお芝居を観て感じました。ずっと公演をされているわけですが、震災の前後で、思いなどが、変わったことはありますか?
今回は静岡から公演を始めていますが、たいていの場所でそのようなご質問をいただきます。でもそれは、観る側の感じ方でしょう。僕らは、「昭和23年の芝居」と思ってやっていますから、3月11日のことは意識にはありません。井上さんは「原子力に、いい加減な気持ちで付き合っても、負けるよ。人間の叡智では勝てないものだ」とおっしゃっていて、井上さんにはメッセージがあると思う。でも僕らは、それは、念頭にはありません。
栗田
私の答えも同じです。観てくださる方の目だと。自分は井上先生の書かれた台詞を伝えることだけを考えています。
会員
ユーレイは有り得ないことなので、これは、娘の心の中の物語だと思いました。この見方はどうでしょうか?
全くそのとおりですね。娘ひとりの(心の中の)お話です。
司会
そろそろ予定の時間になってきました。この後、香川などを回られますが、お体に気をつけて、この素晴らしい作品を各地に届けてください。今日は本当にありがとうございました。
会場の様子

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