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中村香織さんに演劇直前インタビュー

楽屋訪問35

劇団スイセイ・ミュージカル公演「ミュージカル 広い宇宙の中で」鳴門例会(2009年5月17日)で“富士和子”役をされる中村香織さんを公演前に訪ね鳴門市民劇場がインタビューしました。

中村香織さん
鳴門市民劇場(以下鳴門と略)
先日の代表者会では楽しいワークショップを見せていただきありがとうございます。あの日以来、今日がとても待ちどおしかったです。徳島例会で『広い宇宙の中で』を先に見た人の感動したという口コミが広がり、2日間で9名の新会員を迎え、見事クリアをいたしました。スイセイ・ミュージカルの皆様の熱い思いのおかげです。ありがとうございました。
中村(敬称略)
今朝はクリアまであと2名と聞いていたのですが……。クリアになったんですね。よかったです。
鳴門
初演が2005年で、今年で5年目となるこの作品ですが、西田直木さんと劇団の皆様が脚本の段階から議論を重ねて作ってきた作品だとか。中村さんも初期メンバーとして携わってこられたと聞きましたが、中村さんが一番思い入れのある場面などはありますか?
中村
一番初期の頃は、タイトルも違っていて、主人公もお父さんで、家族も今より人数が多くそれぞれの設定も違っていました。かなり多い人数でプロジェクトを動かしていたので、それぞれの意見を盛り込めば盛り込むほど内容の整理がつかなくなってしまったんですね。それで、第三者の意見を聞こうということになり、脚本読みを聞いてもらったんですね。そうすると、聞いていたひとりが『おもしろくない』って言ったんです。それが結構衝撃的でした。思い入れが強すぎて、話が膨らみすぎていたんでしょうね。それからバサッと削って、バサッと設定を変えて初演の幕を開けることになったんです。
鳴門
当初は四女のひかるを演じていらっしゃいましたよね。
中村
そうなんです。今は母親役なんですが、その頃は小学校6年生の末っ子のひかるという女の子の役を演じていました。ひかるは、当初はあまりしゃべらない女の子の設定だったのに、2幕では元気に踊ったりと不整合がありました。ご覧になられた皆さんのご指摘もいただいて2年目から、また大きく作り直し今のひかるに近づきました。5年目となった今は、テーマは変わらないのですが、ある場面に照準を絞ってみたり、見せ方の角度を変えたりすることによって、すっきりとして、さらにいい作品になっております。私にとっては我が子のような作品です。そして、自分たちで産んで育ててきた作品を、鳴門の皆様に見ていただけることは本当に嬉しく思います。
鳴門
中村さんは、ひかると和子を演じられていますが、配役というのはどのようにして決まるのですか?
中村
最初はすごくひかるをやりたかったんですね。多くを語らず歌だけで思いを表現するという役所に遣り甲斐を感じたからです。そして、2年目には和子役のオーデションを受けたんです。
鳴門
はやり、オーディションがあるんですね。
中村
はい、あります。ひかるはお母さんに一度でいいから会いたいという思いがすごく強い子なんですね。その影響からでしょうか、いつか和子役をやりたいなとは思うようになっていたんです。あの頃は自分に和子役ができるとは思ってはいませんでしたが、実際にオーディションを受けて、『頑張ってみるか』と言われお母さんになりました。最初はすごく苦戦しました。皆の印象は末っ子のひかるだし、私自身、子供もいないので。でも、今はひかるがあったから和子ができるのかなって思います。長女の陽子のセリフにも『あなたはお母さんそっくりね』って言うセリフがあるんですね。なので、こうなるべくして、こうなったのかなって思いますね。
鳴門
特に初めて和子を演じた頃は、役の年と中村さんの年にも開きがありますよね。
中村
そうなんですよ。体もちっちゃいので、お母さんにも見えないですしね。どうしようと思ったあげく、まずは形から入ろうと、カツラを買いに行ったんです。それでセレブ的なカツラをみつけてかぶってみると意外によかったんです。
鳴門
では、今日もそのカツラなんですか?
中村
ええ、そうです。そのカツラを被ると気持ちが自然役に入っていけるんですよね。カツラに導かれて……という感じなんです(笑)。もう一つ工夫したのは、広島弁で演じているところです。はじめは標準語でしたが、猫に話しかけるとき『あなたそこで何してるの?』ってセリフを『あんたそこで何しよるね』って言いったらすごく周りの反応が変わったんですね。なかなかうまく役をつかめない時に、演出から自分の母親を想像するようアドバイスを貰いましたので、稽古の間は広島弁でやっていたんです。本番では元に戻そうと思っていましたが、その方がいいよって話になり設定が広島出身に変わったんです。今は普通に喋っていてもほとんど標準語なんですが、徳島にくると音が似ているので広島弁に戻りやすくなりますね。
鳴門
幽霊という非現実的な役柄を演じられておりますが、中村さんは霊を感じたり不思議な体験をされたことはありますか?
中村
金縛りにはよく遭いますが、霊体験とかは全然ないですね。役作りでは、血が流れていない役なので、足音を立てないとか、感情を込めて歌いながらも息使いをたくさんしないように気を使っています。
鳴門
ワークショップでも目線を合わせないという話がありましたよね。
中村
ええ、そうです。夫役の森田さんと、夫婦なのにしゃべったことないね、なんて話をしましたね。
鳴門
中村さんのお気に入りの歌があればお教え下さい。
中村
いっぱいありますが、やはり主題歌の『広い宇宙の中で』ですね。物語のかなでも何回も歌われますが、私はその中で3回歌います。同じ曲ですけど違う表現で『広い宇宙の中で』を歌うようになっています。
鳴門
では、バージョンの違いも楽しみにして、今日は見てみたいと思います。ところで。9歳からジャズダンスを習い、その頃から舞台に興味を持たれ舞台経験がおありだとか、きっかけはどのようなことだったんでしょうか?
中村
味をしめたのは幼稚園のころですね。(笑)発表会でお姫様役をしたかったのにくじ引きで外れて、女王様役になったんです。ところが、女王様は一人だけすごく綺麗なドレスを着られるという、思わぬいい役だったのがきっかけです。それから母の勧めでジャズダンスを習ったりして。でも、本当にこの世界に入りたいと思ったのは宝塚を見てからですね。また、広島市民劇場の会員だった時にお芝居を見てお芝居をやりたいと思うようになりました。スイセイ・ミュージカルとは大学の頃に出会って、ここだと思いオーディションを受けました。ですから、それぞれのタイミングで、いろいろなきっかけがあったのだと思います。
鳴門
中村さんの今一番興味のあることは何ですか?
中村
ここ1・2年いろいろなことをやってみたいって思うようになったのですが、まだ全然実践できていないんですね。今、やってみたいことはスキューバータイビングです。でも、それもまだしたことはないんです。言い続けてもう1年くらいになるんですけどね。舞台と違ったアクティブなことをやっていみたいですね。他にはブーメランにも興味がります。
鳴門
ブーメランですか?
中村
河原でブーメランを飛ばすサークルを友達がやっているんです。すごく面白いそうなんです。たぶん体を動かしてないとダメなんでしょうね。
鳴門
体を動かすことが、美容と健康にいいのでしょうか。中村さんのお肌はとてもお綺麗ですけど、何かされているんですか?
中村
よく食べて、よく寝てということは心がけていますね。特にのどの調子の悪い時はしっかり寝るようにしています。この間『サウンド・オブ・ミュージック』でペギー葉山さんとご一緒したのですが、ペギーさんも、寝ること、食べること、よく笑うことが元気の秘訣だとおっしゃっておりました。あと、豆も体にいいそうですね。これもペギーさんに教わりました。
鳴門
これからやってみたい役とかはありますか?
中村
和子もそうですが、どちらかというとパワフルで元気な役が多いので、黙っていても存在感がある役をしてみたいですね。今は、いろんな役に挑戦してみたいです。この間、岡山の市民劇場で新鋭賞をいただいたんですね。その時に文学座の佐々木愛さんや前進座の高橋祐一郎さんは女優賞・男優賞をもらっていらっしゃったんですが、昔、高橋さんも新鋭賞をもらったことがあるらしく、その賞をもらってからいろいろな役を頂けるようになったとおっしゃていましたので、やっと私も第一歩を踏み出せたかなと思いました。年末に『フットルース』という舞台をしますが、ここではパンチのある役をいただきました。いろいろ挑戦して、可能性を広げていきたいなと思います。
鳴門
最後に、私たちのような演劇鑑賞会の活動について、考えられていることがあればお聞かせください。また、鳴門市民劇場の会員に一言メッセージをお願いいたします。
中村
皆さんは、観劇するプロだと思います。そして、観るだけでなく、一緒に作るというスタンスでいていただけるのが、役者としてすごく励みになります。お芝居を見に行く時は、だいたいは興味のある人に声をかけるくらいじゃないですか。普段の生活でいろんな人に見てもらおうとして、積極的に声をかけることは、なかなか無いことだと思うんですね。だからこそ、市民劇場をきっかけに今まであまり連絡をとってなかった古い友人達に連絡をとって、そこからつながりを深くしていけるのは素晴らしいことだと思うんです。私の母も市民劇場の会員ですが、仕事を辞めて、少し体を悪くしたりして、元気をなくしていた頃があったんですが、『夢があるから!』が例会に取り上げられた時には、いろんな人に声をかけてすごく頑張って19人も増やしたんですね。それをきっかけにすごく元気になって、2ヶ月に1回みんなに会えるというのがすごく励みになっているみたいです。また、お芝居を観るだけでなく、舞台の後にみんなとお芝居の話をしたり、交流をするのが楽しいみたいで人が変わったように明るくなりました。今の世の中、文化・芸術がどんどん削られているので、こういう活動は大切にしたいと思います。私達もいい作品を作って、どんどん会員さんが増え、市民劇場がますます大きくなればいいなと思っています。
中村香織さんとインタビューア

E-mailでのお問い合わせは              鳴門市民劇場ホームページ
nrt-geki@mc.pikara.ne.jp
まで。